「まさか、この部屋に課長や翔さんが来ることになるなんて夢にも思っていませんでした」
そう言って、美空はカップを両手で挟むように持ち上げ紅茶を一口飲んだ。
「...課長、見ての通りです。私、結婚なんてしてません」
男の気配のない室内を見てくれと言わんばかりに、美空は軽く部屋を見渡しながら言った。
美空の言葉に、一気に鼓動が早くなる。
結婚していなかった。美空の言葉に速まる鼓動。
「じゃ...こども...は...?」
結婚していないのなら、隣の部屋ですやすや眠る可愛らしいあの子は、一体誰の...?
「碧は...」
続きを躊躇っている美空の様子に、俺の頭の中には1つの可能性が沸き上がる。
まさか...。
いや、でも...。
「お前の子だよ」
横から聞こえた翔の声。