「...美空」

背後で聞こえた課長の声。



一瞬ビクッとしたけれど、私は気付かない振りをして、そのまま歩き出そうとした。





━━━!!




碧と繋いでいる手とは反対側の手首を力強く掴まれる。



「ちょっと待て、美空!」


「......っ!」



課長の大きな声に、脚が止まる。

な...に...?




掴まれた手首が熱い。課長に触れられた所が熱を帯びて、じわじわと全身に拡がる感じがした。





「どういうことだ...?」


そういう課長の声は何故か震えていて。



ドクンドクン━━━と、胸の鼓動は大きくなるばかり。



何が...?課長は一体、何を...言いたいの?




「お前...結婚したんだよな...?」



「...え?」



どうしてそんなこと...。



「答えろ、美空」


そう言って私を見つめる課長の目は真剣で、ぶつかる視線に堪えきれずに下を向いた。


「どうしたんですか、急に」

課長に掴まれた手はそのままに、私は課長に訊いた。


何か気付いたのだろうか。

私が結婚してないこと?
それとも、碧のこと?

どちらにせよ、誤魔化さなければ...。


体内に大きく響く心臓の動く音。