潮風が頬を撫で、磯の香りが鼻を擽る。
――――店の横の駐車場。
店を出た俺は、車に寄りかかって出入り口の方を眺めていた。
あの場で腕を掴んで顔を見たい衝動に駆られたが、別人だった時のことを考え、奥歯を噛み締めて堪えた。
そのまま店を出たものの、あの女性のことが気になって仕方がない。
顔を見たい。
美空ではないと確認したい。
もしかしたら...という少しの可能性を残して、このまま帰ることなんて出来なかった。
そして...。
――――――潮の香りを乗せた風がざわめく。
風がざわめき、胸が締め付けられるように痛みを覚える。
