「遥菜ちゃん、待たせたね」
出口を出ようとした俺の耳に入ってきた女店主の声に、俺の足が止まる。
今、何と言った...?
今、何と呼んだ...?
一気に心拍数がスピードを上げる。
体内に響く鼓動。
時が止まったかのように動けない俺。
「いえ、こちらこそいつも無理を言ってごめんなさい」
俺が振り返るのと同時に女性が俺の後ろを通り、女店主の方へと歩いて行く。
風に靡くセミロングの髪。
――――ふわりと漂う、甘い香りに...
さらに鼓動は早くなる。
ま...さ..か......。
そんなはずはない...。
美空のはずがない。
ただの偶然だ...。
掌を握りしめ、必死でそう自分に言い聞かせる。
