「全てを...終わらせるつもりでした。それ以外の選択肢が、私には無かったんです...」
涙で薫さんと葵さんの顔が歪んで見える。
「美空さんが余程の決心で死のうとしたことは、分かってたんです...。
あなたを助けた後、誰か美空さんの知り合いに連絡をしようとして携帯を見ました。だけど...アドレス帳には誰の名前も無かったし、メールとかも全部削除されてたから。
この間、一緒にいた男性の姿も見えないし、何かあったのだろうとは思ってました。でも、まさか、そんなこととは...」
そう言う薫さんの横で、葵さんは涙を拭っていた。
「彼を解放することが一番いいのだと思いました。苦しむ人が少なくて済むのだと、自分に言い聞かせて。自己満足に過ぎないことは分かってました。でも...」
「彼が苦しむ姿を見たくなかったのね?」
葵さんは分かってくれるんだ..。私の気持ち。
「状況は全然違ったけれど、私もそうだったから分かるの」
その後、葵さんと薫さんの身の上話を聞かせてくれた。
そして思ったこと。
人を愛することで、人は弱くなる。
人を愛することで、人は強くなる。
人を愛することは、素晴らしいことなのだと。
結局、その日は1日中、薫さんと葵さんと話をした。
苦しいのは私だけじゃない。
私は...課長を愛したことを後悔したくない。
だから、私は生きる。お腹の赤ちゃんと一緒に生きていく。
