「遥菜らしい...」
涙を拭いながら久香さんがポツリ呟いた。
「施設で育った私達は、『家族』というものに強い憧れがあって...。特に遥菜は人一倍その気持ちが強かったように思います。だから、遥菜は海堂さんを家族の元へと返そうとしたのかもしれません。自分の憧れである『家族』を自分のせいで壊すことはできなかったんだと思います」
そういえば...。帰りの空港で。
美空は幸せそうな家族連れを見ていた。
そして、言っていた。
命が繋がってゆく家族って素敵だ、と。
震える口元。
拳を握り締め、ゆっくりと目を閉じた。
「遥菜ちゃん、こうも言っていたよ」
翔は、流れる涙を拭おうともせずに言葉を続けた。
もし、俺と美空が一緒になって、美空に赤ちゃんが出来たら...。俺は美空との赤ちゃんの成長を間近で見ながら、心の奥底で綾と綾の子供のことを考えるだろうと。そして、美空を傷付けないように、そんな自分を悟られまいと苦しむときが来るだろうと。
その時に、悩み苦しむ俺の姿を見たくないんだと。
家族の元へ帰るのは...今しかないのだと。
心が痛い。胸が痛くて仕方がない。美空がどんな思いで...そう言ったのかを想像しただけで、胸がはち切れそうになる。
自分の愚かさに、握り締めた手が震える。
「それが...遥菜の愛し方なんです...」
久香さんの哀しい声。
