前を歩く課長の背中を見つめながら、私は彼に声を掛けた。
「課長...私は後の便で帰りますね」
「え?何で...」
立ち止まり、振り向いた課長は驚いたような表情を浮かべている。
「念には念を入れて、です。誰かに見られたら困るから...。それに、空港の中のお土産屋さんも見たいし...」
課長を見送れば、全てが終わる。
だから、それまでは笑顔でいないと。
課長に怪しまれないよう、細心の注意を払う。
「そうか...分かった」
寂しそうに頷く課長。
搭乗口で。
いよいよ、お別れの時。
課長を見られるのも、これが最後。
課長がゲートを通り、機内に乗ってしまえば、本当に最後。
私が帰るつもりのないことを悟られてはダメ。
泣いたら...ダメ。
そう自分に言い聞かせるものの、意思とは反対に目の前が歪んで見えた。
