たった1日分の筈なのに、二人とも両手いっぱいの荷物を抱えてホテルに戻ってきた私達。
ワインや重いものは課長が持ってくれたから、全然平気だったけれど。
部屋まで歩いていた時だった。
「あれ?あの二人...」
少し先に、あの二人の姿を見つけた。同じホテルだったんだ...。
そう思っている矢先、向こうも私たちに気が付いた。
「先ほどはありがとうございました。あれからすぐによくなりまして...。本当にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
どちらかともなく近付いて、会話を交わす。
「本当にすみません。貧血気味だと分かっていたのに無理しちゃって。皆様に迷惑をおかけして...」
彼女の方が頭を下げた。
「妊娠してらっしゃるそうですね。体大事にしてくださいね」
私が言うと、恥ずかしそうに『ありがとう』と言った女性がとても幸せそうに見えた。
彼らと別れ、自分たちの部屋へ入り、私は調理を始めた。
課長の為に心を込めて料理を作る。
最後の晩餐の為に。
途中で課長が『手伝うことがあったら言って』と言ってくれたけど、ゆっくりしてもらうことにした。
二人で作るのも悪くないな...と一瞬思ったけれど、忙しい毎日を送っている課長に少しでもゆっくり休んでほしくて。今回も無理を言って時間を作ってもらったのに、せめて少しの間でもゆったりとした時間を過ごしてほしいから。
