そのまま二人を見ていると、課長がウサギのラトルを手に取った。
そして、次の瞬間...
それを見ながら優しく微笑んだ。
久しぶりに見る、課長の穏やかな笑顔。
課長の笑顔を見た途端...強張った頬から力が抜けた。
――――――――――。
「ねぇ、久香。『家族』ってどう?いいもの?」
課長と綾さんの方に視線を留めたまま、私は久香に尋ねた。
「どうしたの?突然」
食べる手を止め、私を怪訝そうな顔で見る久香。
「やっぱり、家族の存在って大きいものなんだよね?」
「うん。私にとって翔ちゃんと一花の存在はとても大切な宝物だよ。あの時はどうなるかと思ったけど、今にして思えば、あの時のことがあったからこそ、翔ちゃんとの絆が強くなった気がするの」
あの時っていうのは、きっと離婚問題が生じた時のこと。
「結局翔ちゃんと別れることなんて出来なくて、一花を妊娠してるって分かった時の翔ちゃんの笑顔が本当に嬉しくて、やっぱり翔ちゃんの子供が産みたいって思った」
「それはきっと...翔さんと久香が少しずつ紡いで築き上げた信頼関係があるからだよ。だから...家族としての絆も強くなって、こうして幸せな家族になれてるんだと思うよ」
そう言って、私はラトルを手に微笑む課長に視線を戻した。
「一体、どうしたの?何見てる.....海堂さん...?」
久香が私の視線の先にいる課長に気付いた。
「え?何で...あれって綾さんよね?」
課長の隣にいる綾さんを見て、久香が驚いている。
「...久香。課長と綾さんを見たこと、翔さんには言わないで」
だって、翔さんに言ったら...きっと課長に伝わってしまうから。
私が二人の姿を見たなんて分かったら、課長は苦しむだろうから。
見られたくないはずだから。
「でも...」
「お願い、久香」
「...わかった」
課長と綾さんの姿が見えなくなるまで、私は二人から目を離せなかった。
