「この間はごめん...綾が...」
「...いえ。課長が謝る必要なんて無いのに...」
少しでも明るく努めようと、笑顔で言った。
「綾さん、体調は大丈夫なんですか?つわりとか...」
「...まだ平気みたいだ」
「そうですか...」
静まり返る個室の中。
課長がどう思っているのか訊きたいけれど、怖くてなかなか聞けなくて...。きっと課長も苦しんでるはずだから...そう思うと余計に聞けない。
「美空」
課長に呼ばれて、顔を上げる。
「もうすぐお前の誕生日だろ?プレゼント何がいい?」
そうだった。1ヶ月後は私の誕生日。
「美味しいご飯を食べさせてください」
「そんなんでいいのか?欲しい物は...ないのか?」
欲しい物はある。
だけど...。
『課長』
なんて答える勇気もなくて。
「考えておきますね」
そう笑顔で言うのが精いっぱいだった。
