青のキセキ



え...?



何て言ったの...?



今、何て...?



綾さんが妊娠……?






本当な…の…?




――――ドクドクドク...

綾さんが嬉しそうにお腹に手を当てるのを見て、更に動悸が激しくなる。




視界に入った、課長の目の前に置かれた写真。

それは、私が課長に見せようと手帳に挟んでいる超音波写真とよく似たもので。

そこには、赤ちゃんの入った袋が、ちゃんと写っていた。


この写真が綾さんのものなら、綾さんは妊娠していることを証明していた。




しーんと、静まり返る店内。

誰一人、何も話そうとせず。







そんな張り詰めた空気の中。







「おめでとうございます!」





一番最初にお祝いの言葉をかけたのは...










私。





「綾さんの願いが神様に通じたんですね、きっと。本当におめでとうございます」


じわじわと滲む涙を堪えながら、ひきつる頬を無理矢理引き上げて笑顔を作る。



「ありがとう」


ニッコリ微笑んで、課長の腕に自らの腕を絡めて幸せそうに喜ぶ綾さんは、とても綺麗で。



視界に入る、二人のお揃いの結婚指輪が、キラキラと輝いて見えた。


課長を見ると、とても驚いた表情を浮かべていて。そんな課長に寄り掛かるようにしている綾さんは、幸せそうな表情で超音波写真を眺めていた。


そんな綾さんを前に、やっぱり神様は私を許してはくれないのだと...。課長と綾さんが寄り添う姿を見て、思い知らされた。


「本...当...なの...か...?」


言葉も途切れ途切れに綾さんに確認する課長の声は震えていた。


「驚いた?本当よ。やっと、赤ちゃんが出来たの。ここに私達の赤ちゃんがいるのよ」


そう言って、綾さんが課長の手を取り、自分のお腹へと誘導した。


翔さんも久香も何も言えないみたいで、その場に茫然と立ち尽くしたまま、私達3人はその光景をただ黙って見ていることしか出来なかった。


胸に込み上げる何かを必死になって我慢する。


ダメ...。我慢しなきゃ...。そう自分に言い聞かせようとしたものの、抑えきれなくなって。



すみません、と謝ってトイレに駆け込んだ。


「っ...うっ......」


吐き気は収まったものの、まだ胸に何か詰まったような気分がする。


蛇口から流れ出る水の行く末を見ながら、胸を押さえる。



鏡に写った自分の顔。


真っ青で覇気のない顔。


クス...


何故か笑えてきた。

赤ちゃんのことを課長に言おうとした、まさにそのタイミングで、綾さんの妊娠を知ることになるなんて...。


私って、どうしていつもこうなんだろう。

自分の運の無さに笑えてくる。



そして、泣けてくる。






顔から笑みが消え、涙が溢れ出し、トイレの中で声を殺し、一人で泣いた。