「いらっしゃい、遥菜ちゃん」
カウンターの向こう側で翔さんがいつもと変わらない元気な声で言った。
「何飲む?」
久香に聞かれ、
「グレープフルーツジュースがいいな」
と答えると、
「やっぱりね」
と一人納得している様子の久香。
私が不思議そうな顔をしていたのだろう。
「私も妊娠中同じだったから。オレンジやグレープフルーツとか柑橘系が欲しくなったの」
と教えてくれた。
なるほど...。そう言う訳か。
ここ最近、炭酸や柑橘系の飲み物を好んで口にするようになった私。
少しずつ取れるようになった食事も、梅干しや酢の物などの酸味の物が多い。
翔さんもそれを知っているのか、おひたしや酢の物、あっさりとした雑炊を作ってくれた。
翔さんの作った美味しい料理を食べると、自然と頬が緩む。
「幸せ~」
思わず出た一言。
「こんな御飯で幸せになれるなら、毎日おいで」
こんなことになってお店の手伝いも出来なくなった私に優しい言葉をかけてくれた翔さん。
久香と翔さんに助けられてばかり。
「ごめんね、お店の手伝い休んだままで」
お店が落ち着いた頃合いを見て、翔さんと久香に謝った。
「何言ってんの。そんなこと気にしなくていいんだよ。それより、遥菜ちゃんは自分のこと考えなきゃ」
翔さんの優しい言葉。
「そうだよ遥菜。そんなの、全然気にしなくていいからね」
一花ちゃんをおんぶしながら久香が言った。
「...ありがとう」
二人の気持ちが本当に嬉しくて、同時に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
