青のキセキ




「遥菜が好きな男にもらったらしい時計が、海堂さんと同じフレデリックコンスタントの時計だったんですよ。だから、てっきり...」


目の前の男が言う。



「それにしても、ちょっとやり過ぎたかな...」


口元に手をあて、尚も言葉を続ける男。




遣り過ぎた...?

何...を...?



動悸は最速へ。



「ど...ういう意味...ですか...?」


身体が震える。



落ち着け。落ち着くんだ。




「実は、昨日の夜に遥菜と会ったんですよ。ホテルでね」


ニヤリと笑みを浮かべ、俺を見た佐伯。




「ホ...テル...?」




「えぇ。ちょっと預かり物をしてましてね。それをホテルまで取りに来てもらったんですよ」





静かな個室の中。





心臓の音が体内に響く。





「ま、その後は楽しませてもらいましたけどね」


クックックと澄ました笑顔で、悪びれる様子もなく言った目の前の男。








...何て言った?





この男は、今...何と言った?





「遥菜と別れてからも、あいつの身体が忘れられなくて悶々としてたんですよ。妻が妊娠して溜まってたのもあって...。海堂さんも男なら分かりますよね?あ、お子さんはいらっしゃるんですか?」



こいつは、何を言っている...?



「あいつに好きな男がいると知って嫉妬したんです。上司である海堂さんにこんなこと言うのは非常識かもしれませんが...あいつの身体マジでよすぎるんですよ。だから...あの極上の身体を他の奴にとられてたまるかって思いもあって、久しぶりに明け方までじっくりと堪能しましたよ」


まるで武勇伝のように淡々と話す。




「本音を言うと、手放したくないんですけどね。でも、妻や義両親にばれたら院長の座が危ないんで、これっきりにしますよ」





噛み締めた奥歯がギリギリと音を立てた。



全身の血が一気に沸き立つような錯覚。頭に血が上る。




握りしめた掌が震える。





俺が美空の相手だと思いもせずに、まるで自慢話のように語る佐伯。








話すだけ話し、挨拶をして帰って行った佐伯の背中。



追いかけて殴りたい衝動に駆られる。






とりあえず、あいつの話か本当か確かめなければ...。






もし、本当だったら...。




最速の動悸。









美空...。




美空...。



美空...。