「あ、ご結婚されてたんですね。変なことを言ってすみません」
掴んでいた俺の左手に光る結婚指輪を見て、佐伯が俺の手を放した。
「...遥菜って言いましたよね、今。それって美空のことですか...?」
少しずつ加速する動悸を抑えながら、思い切って聞いてみる。
「え、ええ。実は、昔彼女と付き合ってたんですよ。まさか、依頼先に遥菜がいたなんてビックリしましたよ。偶然の再会ってやつです」
そう言って、彼がコーヒーを一口飲んだ。
美空と付き合ってた...?
ていうことは。
つまり。
目の前にいる、この男が...暴力を振るい流産させた、美空の前の男...?
でも、美空は何も言ってなかった。
そんなことは一言も...。
何も聞いてな...
っ!!
もしか...して...。
昨日、美空が言おうとしていたのは...。
テーブルの下に隠した拳が、カタカタと震え出す。
動悸が加速。
そして。
『そりゃ来れないか』
頭に蘇る言葉。
