その日の夜。
一人、病室で考える。
今回のことを警察に言うかどうか。
そして...赤ちゃんのこと。
レイプは親告罪だということは知っている。私自らが警察に言わないと、修一さんが罪に問われることはない。
先生も言っていたように、彼の体液や破られた服など証拠はあるから、私が告訴さえすれば修一さんは捕まる。
でも、警察の取り調べ等に対する不安。
警察に言ったからって、私が修一さんに抱かれてしまったことは消えない。
それに、彼の待つホテルに一人で行ったのは私。
密室だと分かってたのに...。
にもかかわらず、時計を返してほしい一心で、私は彼の元を訪れた。
もしも。
それを合意だと言われたら...?
それに...。殴られたからとはいえ、私は抵抗することを諦めた。
その事実が更に自分自身を苦しめる。
その結果、一度だけでなく何度も抱かれてしまった...。
嫌だ...。もう嫌...。
髪を振り乱し、何度も首を横に振る。
早くこのことを忘れてしまいたい。
辛い。悔しい。
「っ!...う...うぅっ」
いきなり込み上げる吐き気。
口元を手で押さえ、病室内の洗面台に急ぐ。
はぁ...はぁ...。
あまりの気分の悪さに、息をすることで精一杯。
私の中に、再び芽生えた『命』。
本当なら愛する人の子供を身籠ることが出来たことは幸せなこと。
ここに課長の赤ちゃんがいると思うだけで、こんなにも心が温かくなる。
けれど...。課長には綾さんがいるのに...。
課長に会いたい。
なのに...会えない。
私はどうすればいいの...。
