その夜、『翔』へ赴く。
「遥菜ちゃん、いらっしゃい!」
翔さんの笑顔に迎えられ、曇った心が少しばかり晴れた気がした。
「何か、あった?」
何故か、いつでも翔さんにはお見通しだ。
「...彼に会ったんです」
「彼?」
「修一さん...です」
「どこで!?」
「仕事で...。彼がクライアントで、担当が私と佐山さんなんです」
俯き加減で、ビールの入ったジョッキを見る。
白い泡と底から湧き出る気泡を眺めながら、今日のことを振り返る。
目を見開いてビックリしている翔さんに、私は事情を説明した。
「大和には言ったの?」
「..まだです」
「言わないつもりなの?」
「…今、出張で忙しい時だから。仕事に専念してほしいし…。どうしたらいいのかわからなくて。それに、仕事が終わってしまえば、彼...修一さんとの接点はなくなるから」
「そっか...。大和に心配かけたくないんだ?」
「...はい」
「そっかぁ...。遥菜ちゃんが言いたくないんなら、俺も何も言わないよ。でも、ヤツと二人きりで会うことは避けた方がいい」
「担当が私一人だけじゃなくて佐山さんも一緒だから、それは大丈夫かと思うんですけど」
「ヤツとの仕事はいつまでなの?」
「一応、3か月後に開院らしいので、それまでには全て終わる予定です」
課長が帰ってくる頃には全部終わってる筈。
余計な心配をかけたくないから、今は言わない方がいい。
そう思った。
