青のキセキ


具合を心配する綾に、美空が頭を下げる。


普段から綾に対して罪の意識を感じている美空は、今どのような思いでいるのか。

『すみません』という言葉の中に込められているだろう、色々な想い。


悪いのは美空じゃない、俺なのに。


迷惑をかけたと謝る美空の胸中は俺の想像以上に酷く傷付いている。そんな思いをさせていることに、俺自身心が張り裂けそうな思いだ。


タクシーが来たことを告げに来た綾に、美空が帰ろうと体を起こす。


今、気が付いたばかりで、まだ顔色が悪いのに。無理はするな。


俺は美空の代わりに布団を畳もうと横から手を伸ばした、その瞬間、美空の手と――――触れた。



ビクッと身体を震わせ、慌てて手を引っ込めた美空。


再び、「すみません」と謝る美空に、俺の胸がズキッと痛む。




出会った時からそうだった。

謝ってばかりいた。





こいつは、いつも何かに怯えていた。




なのに、俺も同じ思いをさせている。




胸が締め付けられる。











石川と並んで部屋を出ていく美空の後ろを、綾と並んで歩く。


会館の前に停まっていたタクシーに乗り込む二人を見て、喉まで出かかった言葉を必死で噛み殺す。



『帰るな』





気を付けて帰れよ。




心とは裏腹に、口から出た言葉。






美空は、俺と目を合わせようとせず、ややうつむき加減で挨拶を済ませ、タクシーで帰っていった。








タクシーが見えなくなり、綾と共に控室に移動する。






「美空さん、元気そうでよかったわね」


お茶を淹れながら、綾が言った。




「あ...あぁ、そうだな」


元気そう?んな訳ないだろう。青い顔で、今にも再び倒れてしまいそうな程弱々しく微笑む美空の表情が思い出される。



石川と二人で帰らせることだけでさえ嫌なのに。


体調の悪い美空を、他の男に、ましてや美空のことが好きな石川に送らせることになるなんて。



これは、罰なのか...。






控室のソファに横になり、前腕を目の上に乗せ、目を閉じる。



思い浮かぶのは美空のことばかりだ。





石川と二人で大丈夫か。


何時ごろ家に着くのか。


身体は大丈夫なのか。





考えれば考えるほど、心配になる。


そして、身動きの取れない自分自身にイライラする。




くそっ!!




どうしたらいいんだ...。