青のキセキ

葬儀が終わり、参列者も一人二人と帰ってゆく。


会場内に人が居なくなった頃を見計らい、部長と石川、そして美空が近付いてきた。


美空がずっと目を合わそうとせず、俯いたままでいることに懸念を抱きながらも、みんなの前で変に親しくするわけにもいかず、空いている部屋へ移動した。




葬儀に参列してくれた御礼を伝えた後、仕事の打ち合わせをするために、控え室に置いてある手帳を取りに戻った。



まさか、その間に…。俺が席を外した間に、綾が挨拶に来るなんて思いもしなかった。


その上、美空と二人でコーヒーを入れることになるなんて、想像すらしなかった。



















手帳を手に、部屋へ戻ると、美空の姿がなかった。



「美空は...?」



「綾さんとコーヒーを淹れに行きましたよ」




石川の言葉に耳を疑う。



は?



綾と一緒に...?




何で...。






「綾さん、わざわざ挨拶に来てくれてね。辛くて大変だろうに...。君にすごく感謝していたよ。何もかも君任せで、頼りになると言っていた。これからは、君だけが頼りだとも言っていたよ」





部長が話す間、きっと俺の表情はかなり険しかったに違いない。部長や石川が変に思ったかもしれないが、そんなことはどうでもいいぐらい、俺は美空のことしか考えられなかった。





綾の話を聞いて、美空はどう思ったのか。


辛い思いをさせたのではないか。


泣くのを我慢しているのではないか。





今でも、綾と二人で何の話をしているのか気になってしょうがない。


綾が俺のことを何か言っているのではないか。


それが美空を傷付けているのではないか。







「すみません。様子を見に行ってきます」


いてもたってもいられず、部長と石川に断りを入れ、炊事場へ様子を見に行こうと部屋のドアを開けた。