夕焼けのオレンジ色が胸に染みる。山の向こうに夕陽が沈みかけ、空が群青色に染まろうとしていた。


葬儀の準備も整い、後は時間が来るのを待つのみ。


車の音がする度に、心臓が止まりそうになる。

車から降りる人物の顔が美空ではないことを確認しては、胸を撫で下ろす。


「大和、どうかしたの?」

車を気にする俺を不審に思ったのか、綾が首を傾げて聞いてきた。


チッ。綾に気付かれる程、俺は動揺してんのかよ…。


「部長が参列してくれるらしい」


差し障りのないように、答える。



「そうなの?わざわざ?申し訳ないわ。会社から供花も頂いたのに...。斉藤部長、一人で来られるの?」


「いや...。他にも、普段、俺のサポートをしてもらってる奴も一緒に来るらしい」


「そう。父と母のために、こんな田舎まで来ていただけるなんて...」


綾は何も知らないから、純粋に会社の人間が参列してくれることを嬉しく思っている様子だった。



葬儀を前に、綾も少し気持ちが落ち着いたようで、ホッとしたのも束の間、親族と両親の思い出話をし始め、涙を流す綾。



感情の起伏が激しい。




このまま、部長と美空が来るのをここで待ちたいと思ったが、綾が再び泣き出したのを放っておくわけにもいかず、控室に戻ることにした。





もうすぐ葬儀が始まる。





もうすぐ、美空が――――――――来る。