課長が出て行き、私一人残された部屋。
広いベッドで一人、横になる。
わかってる。
課長が帰るのは当然のことだと。
綾さんのお父さんとお母さんが事故に遭ったなんて...。
綾さんのご両親は、課長にとっても家族なのだから。
頭の中ではちゃんと理解している。課長が綾さんの所へ帰った理由を。
でも、心の中はどす黒い感情でいっぱいだった。
課長の前では理解ある女でいたかったから、綾さんの元へ帰ってあげてと言った私。
実際は...。
理由はどうであれ、綾さんの所へ帰る課長の背中を見ながら、どれほど
「行かないで」
と叫びたかったことか。
課長が私を愛してくれていることはわかってる。でも、彼と綾さんが夫婦でいる限り、私は二番目であることに変わりはないのだ。
私は彼の隣を歩くことは許されないのだから。
私ができることは、彼の背中を見つめることだけ。
自然と流れる涙。
誰に聞かれる訳でもないのに、私は声を押し殺して――――
――――泣いた。
