「もう、からかわないでください」
ぷぅっと頬を膨らませる。
「本当だよ。もっと自分に自信を持てって」
メニューを見ながら話をしていると、女将さんがビールを持ってきてくれた。
「はい、おまたせ」
課長と私の前にビールを置く女将さん。
「海堂さん、こちらのお嬢さんは?」
女将さんが課長に聞く。
「部下の美空です。本社で同じ部署で働いていて、今回の出張で俺のサポートをしてもらうために一緒に来てもらったんです」
「美空です。課長ここのお酒とお料理が美味しいと聞いて...。メニューも美味しそうなものばかりで、迷っちゃいます」
「ありがとう。海堂さんが女性と来るなんて初めてだったから、最初は奥様かと思ったんだけど...。確か、奥様は同い年だって言ってたでしょ?その割には若いな...と思って。同じ会社の方だったのね」
私と課長の関係を知る由もなく、女将さんが言った。
「......」
私は...
笑顔を返すことしかできなかった。
「さ、お料理の注文を聞こうかしら」
女将さんが言ったので、メニューを見る。
「何か食べたいものある?」
課長に聞かれ、私は再びメニューに目を通す。
どれも美味しそうなメニューばかり。
「きのこを使った料理以外で、ですよね?」
上目づかいで課長を見ると、
「当たり前だ」
と言って、さわやかな笑みを浮かべる課長。
「課長のおすすめは何ですか?」
「そうだな。どれも美味かったんだが....特にこれとこれかな」
そう言いながら、メニューを指さす課長。
課長の手に光る指輪にも慣れてきた今日この頃。
「じゃ、それお願いします。あと、これとこれも」
さっきメニューを見た時に気になってた料理も一緒に頼む。
注文を聞き終え、女将さんが出て行った後、課長が口を開いた。
