そのまま手を繋いで歩くこと10分。
課長が単身赴任中に通っていたという店に到着。
入口に提灯が飾ってあって、和風の居酒屋の雰囲気。
「いらっしゃ...。海堂さん!」
店に入ると、和装した女将さんと思われる女性が課長を見て笑顔で言った。
「ご無沙汰しています。女将さん」
「まぁまぁ。よく来てくれたわね。こっちには旅行で?」
「いや、出張なんです」
「そう。ご苦労様。とりあえず座って。そちらのお嬢さんも」
課長の後ろにいた私の方を見て女将さんが言った。
女将さんは私たちを奥の座敷に案内してくれた。
障子で仕切られたその座敷で、課長と向い合せに座る。
「まずはビールでいいかしら?」
女将さんに聞かれ、課長が私に確認する。
「美空、ビールでいいか?」
「はい」
私の答えを確認し、女将さんに返事する課長。
「じゃ、ビール2つ」
「はい。かしこまりました」
女将さんが出て行く。
「週に2回はここで晩飯を食ってたんだ。あの女将さんがすごくいい人でさ」
おしぼりで手を拭きながら、課長が言う。
「わかります。笑顔がとても素敵な方ですね」
私も思ったことを素直に告げた。
「お前の笑顔も素敵だよ」
課長が私を見つめて言うから...。
再び赤面。
恥ずかしさのあまり、下を向く私。
その様子を見てか、プププと笑う課長。
