再び甘く激しいキスを交わした後、少しの間、課長の胸に抱かれていた。
課長の気持ちが嬉しくて。
課長のぬくもりが、夢でないことを証明してくれる。
「さて、とりあえず、店に戻るか。あいつらが待ってるだろうしな」
私の頭を優しく撫でて、課長が言った。
「はい」
課長に手を引かれ、店に戻る私。
翔さんと久香が待つ個室へ入る。と同時に、課長と私の繋がれた手へ注がれた視線。
目を合わせて、にや~っと笑みを零す翔さんと久香。
「まぁまぁ、こっちに来て座りなよ。お2人さん」
何もかもお見通しのように、話す翔さん。
「翔、お前、俺達を嵌めたな?」
席につくなり、切れ長の目で翔さんを睨む課長。
「嵌めるだなんて、そんな悪人じゃないですよ~。僕は」
ビールを飲みながら、おどけたように返す翔さんの横で、久香が顔の前で両手を合わせて『ごめん』と謝る。
もう、おせっかいなんだから。
「で、これからのことなんだけど……」
翔さんが、おどけた調子のまま言葉を続けたかと思った次の瞬間、
「大和、綾と別れろ」
真顔になって、いきなりの直球。
「遥菜ちゃんと不倫するつもりじゃないだろ?」
私の心が──――ざわめく。
『不倫』という言葉に胸が締め付けられる。
私が課長と付き合うことは、赦されることじゃない。
課長が綾さんと別れたら問題はないけれど。
でも、綾さんは?
バーベキューの時の綾さんを思い出す。
課長がみんなに慕われていると知って喜ぶ綾さん。課長との赤ちゃんを望んでいる綾さん。
そんな彼女から課長を奪うようなこと、していいの?
そんな権利、私には────ない。
それに、もし綾さんと別れたとしても、私との関係が周りに知られたら?
みんなから信頼されている課長の立場を考えたら、そんなことは許されない。
課長と繋がれたままの手を見ながら、課長の体温を感じながら、私たちの関係が不毛なものなんだと改めて思い知らされる。
