「美空、本当に石川に告白されたのか?」
閉じられた課長の口が開いたかと思うと、私に確認する課長。
「は……い」
俯いて小さな声で頷く私。
「そうか……」
重い空気が私達を包む。
「なぁ、大和」
翔さんが課長の名前を呼ぶ。
「お前はどうしたい?」
「え?」
「お前の正直な気持ちは?」
「俺は……」
それっきり、また黙ってしまう課長。
「遥菜は?」
久香に話をふられ、慌てる。
「私は……」
課長が好き。
でも、そんなこと言えるはずがないじゃない。今だって、私が石川さんに告白されたことを聞いて困ってる。だって、私のことなんて課長には関係のない話だから。そんなこと言われても課長にはどうでもいい話なんだから。
「石川さんとのこと、考えてみようかと…思ってる」
今日でさっぱり課長への想いは捨てる、そう決めた。
「友達から始めてみるのも悪くないかなって。このままじゃ、何も変わらないから」
嘘つき。本当は、辛いから逃げるだけ。
課長をこれ以上好きになる前に。
これ以上辛い思いをする前に。
課長を困らせないように。
私が、どれだけ課長を想っても、それは許されないことだから。
課長を想いながら側にいることは、許されないことだから。
「友達から始まる恋もあると思うの。少しずつ気持ちが近付けば、触れ合うことも怖くなくなるかもしれない」
自分に言い聞かせるように話す。
「……駄目だ」
絞り出すような課長の低い声。
「え?」
「ちょっと来い!」
いきなり私の腕を掴んで立ち上がる課長を、翔さんと久香がにっこり笑って見上げていた。
「ちょ……課長……待っ」
手首を引っ張られ、個室から連れ出される。
店員さんも何事かとこっちを見てる。
店の外に出て、人気のない路地に入る。
