青のキセキ

「今ね、私達の馴れ初めを話してたの」

課長の方へ歩み寄り、課長の腕に自分の腕を絡める綾さん。



一瞬、課長が私のほうを見た....ような気がした。






「課長、聞いちゃいましたよ~」

「大学時代からなんて、素敵~」


課長と綾さんを囃し立てる周りのみんな。




「子どもは作らないんですか?」


佐山さんが聞く。



「......実は、なかなか出来なくて」



ちょっぴり悲しそうに綾さんが言った。



「すみません!私ったら失礼なことを」


慌てて佐山さんが謝る。



「いいのよ。気にしないで。それに、諦めた訳じゃないし」


「ね、大和」


課長に同意を求める綾さん。






「......あぁ」



少し間を空けて肯定する課長。






もういやだ。ここにいたくない。



膝の上に置いていた手が震える。


「じゃ、今日はお肉を沢山食べて、精をつけなきゃですね。課長」


周りの社員がからかい気味に言う。


「だって。大和。今日の夜、頑張らなきゃね」

半分冗談ぽく課長に語りかける綾さんに対して、私の心は嫉妬でいっぱいで顔を上げられなかった。






今すぐここから消えたい!






そう思った時だった。



「遥菜~!!」


遠くの方から私を呼ぶ久香の声が聞こえたのは。