青のキセキ

手を俺の腕に沿わせながら、綾が上目遣いで俺を見る。


「先週帰ってきても、抱いてくれなかったし。最近、全然抱いてくれないから」


そう言うと、綾が俺の唇に自分の唇を重ねようとした。



その瞬間、美空とのキスを思い出し、思わず顔を背けてしまう俺。

綾とキスをすれば、美空の感触を忘れてしまうような気がして...。


「大和?」

そんな俺を不審に思い、俺の顔を覗き込む綾の目を俺は見られなかった。


「どうしたの?」


「ごめん、そんな気分じゃないんだ。明日にしてくれないか」


俺の腕に添えられた綾の手を外す。



「ごめん。疲れてるんだ。明日も早く出ないといけないし、もう寝よう。お前がベッドを使っていいから」

綾にそう言った後、ベッドルームのクローゼットからタオルケットを出してきてソファに横になる。



「もう!私のこと、何だと思ってるの!?」


目を閉じた俺の横で、文句を言いまくる綾。






分かってる。悪いのは俺だ。綾を抱かない俺。

いつまで逃げるつもりなのか。



結局、俺は、綾がベッドルームへ行った後も朝まで一睡もできなかった。