青のキセキ

美空が呼んでくれたタクシーに乗り、マンションの住所を告げた。


美空のマンションが段々と遠くなる。



はぁ~と溜息をついたと同時に、携帯の着信音が鳴った。

携帯を見て誰からの電話か確認して体が固まる。



携帯電話に表示される、綾の名。




何故、このタイミングでかかってくるのか。



出るか出まいか悩む。






「....もしもし」



「大和?今日も帰ってこないの?」



「....悪い。今日も帰れない」


「この前のこと謝るから。お願い。帰ってきて」


「......」


綾から謝ってくるなんて、初めてのことだった。


俺はどうしたらいい。綾の元へ帰るべきか、マンションへ帰るべきか。



綾に即答できずに無言になる。



「大和、お願い。ここへ...帰って...き..て」

綾の声が段々と泣き声になっていく。



それでも、俺はすぐに返事できなかった。


「大和...お..願い...だか...ら...」


「....わかった。そっちに帰るよ」


綾の辛そうな泣き声にいた堪れず、返事する。


電話を切った俺は、大きく溜息をついた。



そして、運転手さんに行き先の変更を告げる。

自宅の住所を告げ、久しぶりに綾の待つ家に帰る事になった。


結婚したときに郊外に建てた家。会社まで電車を使い片道1時間半かかる家へ。