「本当にごめん」


そう言って目を伏せる課長の表情は、とても苦しそうで。





「私、気にしてませんから。忘れます。だから、課長も忘れてください」



課長の苦しそうな顔は見たくない。




お互い、今のことは忘れた方がいい。





そう思った。











「美空」



課長に名前を呼ばれるだけで、胸が熱くなる。


この衝動を私は忘れられるのだろうか。





「今日は本当にすみませんでした」

精一杯の笑顔を作る。


「これからは課長に迷惑をかけないように気を付けますね」






「だから、今のことは。お互い、忘れましょう....」



必死で堪える。涙があふれるのを。



泣くな、私。



泣いたら、また課長が心配する。


課長を苦しめる。



気持ちを知られてしまう。