顔を上げて耳元で
「楓ちゃん」
「は、はい」
変に緊張している。
「どうしても楓ちゃんと接点持ちたくても先輩は『駄目だ』の一点張りだし、も うこうなりゃ使える手は使おうって」
「使える手?」
いったい何の…
「吉武先輩とメンバーに話した」
「えっ?」
吉武さんにって…吉武さんはマネー ジャーさんだよ。
桐生さん達の恋愛なんて認めない。
「さすがに初めは反対されたよ」
それが当たり前だよ。
「あ、勘違いしないで。俺が恋愛したら ファンが離れるとかじゃなくて吉武先輩 は楓ちゃんのことを思って反対したんだ よ。楓ちゃんを傷つけるようなことは許 せないってね」
「……」
吉武さん…
「メンバーも山科先輩の気性は分かってるし、てか、アイツ等も先輩の家で楓 ちゃんと会ってるんだよね」
「えっ?」
それすら知らない。
「だけど俺が本気だって分かって加勢してくれて吉武先輩も折れた。いや折れた だけじゃなく山科先輩を口説いてくれた」
吉武さん、どこまで…普通なら大反対しなきゃいけない立場でしょうに。



