「忘れているつもりだった。でも楓ちゃんを再び見て…やっぱり心の片隅に楓 ちゃんは三年前からいたんだなって改めて思った。本気で好きなんだって」
「……」
「呆れるよな?気持ち悪いよな?逢ったと言っても俺の一方的な出逢いだし、楓 ちゃんは全く俺のことを知らないんだから。いきなり『好きだ』なんて言ったっ て、からかわれてると思うだろうし。い や、もしかしら」
「えっ?」
「変態とかストーカーだとか思うかも知れない」
自嘲気味なその言葉に私は何も返せない。
確かにこんなことを言われて直ぐに信じることは普通なら出来ない。
第一、桐生さんは芸能人、スーパースターなんだから。
スターの自分を知らない私にプライドが 傷ついて報復じゃないけどからかってる と朝の私なら思ったかも知れない。
だけど…
今日一日、桐生さんと一緒にいて…
この人は本当に真面目な優しい人だなって。
あんな仏頂面をしていた私に苛立ちもせ ずスターぶりもせず私をリラックスさせ る為に時間をかけてくれた。
からかうだけならあそこまでしない。
何たってスターなんだもん。
私が桐生さんを全く知らず、その上に撮影に非協力なら苛立ったり、さっさと 『この子は嫌だ』って言ったってそれは それで通った話し。



