Fake Love




「あの時…楓ちゃんの笑顔を独占してる 奴がめちゃめちゃ羨ましかった」


「……」


「何回か家に行って楓ちゃんを見てるのに笑顔なんて見たことなかったし、て か、先ず俺の顔を見てくれたことすらな かったもんな」


「…すみません」


兄貴が中学生の頃から友達がしょっちゅう出入りしていたから。


知ってるのって吉武さんと他数人だけだもん。


「何回も言うけど謝ることはないから」


「は、はぁ」


「その時に俺も楓ちゃんの笑顔を見たいなって。いや違うか」


「えっ?」


私を抱きしめている桐生さんの腕に力が こもった。


「俺に笑い顔を見せて欲しかった。楓 ちゃんの笑顔を独占したかった」


「き、桐生さん」


たぶん今の私…これ以上は赤くなれないくらい赤くなってるだろうし、それ以上 に心臓が煩いくらいに音を立ててる。