Fake Love




「ありがたいことに俺達の曲が受け入れられて…そうすっとさっき言ったように色んな誘いがあった」


ホテルでしていた話しだよね。


「誘いに乗ったことはあるよ」


「……」


そりゃ桐生さんも男だもん。


あって当然の話し。

だけど


チクッ


何か胸が痛い。


「感情は…なかった。楓ちゃんは軽蔑するかも知れないけど嘘はつきたくないから」


「……」


「一種のストレス発散みたいな割り切った付き合い。いや付き合いすらないな。その場だけの関係」


チクッ


また…


「虚しかった。そんなことをしてるのが」


「……」


「そんな時に取材で久しぶりに大学に行った」


「えっ?大学にですか」


「あぁ。その取材の時に楓ちゃんを見つけた」


「私?」


いつ頃の話だろう?


「直ぐに分かった。もう三年くらい経ってんのにね」


「えっ?じゃあ今年?」


あまりに驚いて声が出ない。

「楓ちゃん、なんか男と楽しそうに話し ていた。ロケなんかには全く目もくれな いで。結構人だかりは出来てたんだけど 本当に我関せずって雰囲気だった」


「……」


うちの大学、わりとドラマやなんやらで テレビのロケが入ってる。


一年の頃こそ珍しかったから野次馬していたけど、そんなのは数回だけであまり 興味もなかった。


だってドラマ撮影なんて同じことを何回 も繰り返してるし、テレビでは愛想のい い役者さんが高飛車な態度で怒鳴ってる 現場を見たから興味もなくなった。