淡夢【短編集】

サナはコートのしたに着ていた服の上から僕の胸に目をこすり付け、涙を拭った。


「ごめん、少し汚しちゃったかも……」


「キミの涙ならいくら濡れても汚れたりしないよ」


「ふふっ、そう言うと思った」


サナは僕のコートの中から出た……


そして辺りを見渡した……


「あ、私あれ見て立ち止まったんだった」


サナはアクセサリーを売っている露店を指さしていた。


ローブを深くかぶった老人が営業している。


サナと僕はその露店の前まで行った。


いろんな修飾品が飾られている。


サナはその中から、一つのネックレスを手に取った。


「ファイにはこれが似合うと思うよ?」


それは美しく緋色に輝く宝石がはめ込まれたネックレスだった。


僕は勧められるがままに、そのネックレスを買うことにした。


「私はこれがいいなぁ。ファイのやつとは色違い」


サナは蒼色に輝く宝石のはめ込まれたネックレスを手に取った。


僕のものと同じデザインだ。


「それじゃあ、それは僕が買ってあげるよ」


「ホント!? やったぁ!」


まぁ、宝石と言っても、それは安い宝石だ。


僕は買ってあげたネックレスをサナの首にかけてあげた……


「ふふっ、ありがとっ」


キミの笑顔を見れるのなら、このくらいお安い御用……


ここだけの話だが、実はサナはかなりの財政難に陥っている。


下手をすれば、本当に国で一番の貧乏人かもしれない。


僕は初めてサナに会ったとき、あまりの容姿に、どこかのお嬢様かと思ったが……


まぁ僕も5本の指に入る貧乏人なのだが……