淡夢【短編集】


いつも真夜中に歩く広場には、やはり人が大勢いた。


「おい見ろ、あれファイじゃないか?」


「ホントだわ! ここ数年見なかったけど、やっぱり美形ね」


「ねぇ見てよ! 超カッコいい人がいるよ!」


周りの人間がうるさいな。


やはり僕は浮いてしまっているようだ。


まぁ、だが、この顔で、これだけ目立つコートを着ているのでは、仕方がないか。


「んっ?」


そのとき、僕は右腕を誰か両手で握られた。


ゆっくり見てみると、その犯人はサナだった。


僕の二の腕あたりに抱く付くようにくっつき、頭を密着させていた。


「何をしてるんだい?」


「ん~? だってファイのコートふわふわしてて気持ち良いんだもん」


サナは今にも眠ってしまいそうなほど、安心しきっている顔で、僕にくっついている。


まったく、この人は……人目というものを気にしないのだろうか。



まぁ……




そうしてくれていた方が……




人ゴミではぐれなくて済みそうだ……