わたしががんばっても。


稜はしぶしぶのった。


でも木下さんは、私たちが仲良く話していても何も言ってこなかった。

「…なんだよ。アイツ言ってこねーじゃん。」

「……んー、まだなんも感じてないとか?」


なーんて、そんなに木下さんの性格なんて知らないけど。


「冷たくしてみたら?」

「…分かった。」



稜が木下さんに冷たくしてるのを見てるのは正直心地よかった。

でも、その裏で稜がさみしそうな顔をしているのを見るたびに切なくなった。




「ねぇ、キスしよ?」


「は…?」


「もうすこしで、南さんが来るはずだから。」


委員会に行く前にトイレに行っていた木下さんはカバンをトイレの前に置いていた。

そのときこっそり数学の教科書を抜いておいた。

木下さんって意外と気づきやすいから来ると思う。

スタスタ…


足音が聞こえてきた。

「しっ!…ほら聞こえるでしょ。」

稜に小さい声で言う。

「これで完全にヤキモチやいてくれるよ。キスした後は冷たくするんだよ?いい?」


稜は嫌そうな顔でわたしに近づいた。

「麻琴…」

小さくつぶやく稜。

唇が重なった。