わたしががんばっても。

「ねぇ、提案があるんだけど。」

稜に耳打ちをするようにして小声で言った。


「わたしが浮気相手のフリして、ヤキモチやかせない?」


「は…?何言ってんの、おまえ。」

稜は驚いた顔をした。

「アイツは…笑った顔がかわいいんだよ。そんなん、アイツ泣くじゃねーか。」


大切なんだ。そんなにも。

「大丈夫。あの子、言いたいことはちゃんと言える子だもの。嫌なら嫌って言ってくれるよ。」

「何でお前そんなこと知ってんだよ。」


「だって、同じ中学だし、クラス一緒になったことだってあるもの。」

クラスが一緒になったことはあるけど、仲はあんまいいって感じではなかった。

挨拶を交わすか交わさないかって感じ。

だから、木下さんがどんな子かなんて知らないんだけどね。