私とテニスとあいつらと

「おい、これ飲めよ」

何かと思い顔をあげると、その男子は「大変だなお前」な視線で私を見ていた。

「あ、どうも・・・」
「朝から面白いもの見れた～！ありがとう！」

私がスポーツドリンクを飲んでいると、なぜか隣にいた男子生徒Eにお礼を言われてしまった。もう、どこにどうツッコめばいいのかわからない私は、とりあえず「はぁ・・」とだけ返事をしてスポーツドリンクをごくごくと飲む。

「俺、篠本裕太！よろしく～！君はなんてゆーの？」
「い、井上、美月・・・」
「そっか～、じゃあ美月、よろしくね！」

“ササモトユウタ”と言う男子生徒Eは、私の手をとり上下にぶんぶんと振ってにこにこしている。何がよろしくなのかわからない私は、とりあえず目の前の少年にされるがまま。

「あ。ちなみに、美月にドリンクくれたのは裕樹。桑本裕樹ってゆーんだよ！」
「クワモト、ヒロキ・・？」

ササモトユウタがプチ自己紹介をしていると、私の後ろから、とてつもない殺気が漂ってきた。ビックリして後ろを振り向くと、こめかみに青筋を浮かび上がらせた幸田の姿が。

「おい、てめえら！なに自己紹介してんだ！」
「え～！いいじゃん自己紹介くらい！」
「よくねぇ！」

そう言うと幸田は、私を思いっきり睨んできた。

「おいてめえ。のんきにこいつ等と話してんじゃねーよ！」
「はぁ・・・」
「はぁじゃねえ！・・・まぁいい。やっと見つけ出したぜ、女」

私が、初めて死ぬかもしれないと思った瞬間だった。

「なっ、なんのことでしょう？私にはさっぱり・・」
「ふん。この期に及んでもシラを切るつもりか？その姿、間違いはねぇ。忘れもしねぇぜ。」

忘れてくれてよかったのに・・・

私がそう思っていると、幸田は余裕の笑みを浮かべて話しかけてきた。

「女。俺に何か言うことはないのか？」

私が返答に困っていると、ドドドド・・・！という地響きが聞こえてきた。なんだ？！と音のする方に目を向けると、なんと見慣れた美少女の姿が。