だけど、"春ちゃん"と呼ぶのは一人しかいないから再び抱きついてきているみどりの体を押し退けながら、その人の名を呼んだ。




「真理子ちゃんっ、」



「稚春嬢ちゃん、戻ってきてくれてよかったですっ!!」



「わ、分かった。分かったからみどりは取り敢えず落ち着いて。」



「春ちゃぁあああぁん!!」



「もうっ!煩いなっ!」





なんなんだ、コイツらは。



静かにするということはしてくれないのか。




《藤山》に来てまだそんなに時間は経ってないのに疲れを少し感じる。



ふぅ、と小さく息をつきたかったが





「春ちゃあああぁん!!」



「ぐえっ!」





それをすることは出来なかった。




「春ちゃん、春ちゃん!!」




すりすり、頬に感じる真理子ちゃんの柔らかいすべすべの肌。



それを直に感じながら興奮している真理子ちゃんの背中を擦る。




すると、若干落ち着きを取り戻した真理子ちゃんが私の肩に顔を埋めたまま「なんであの日、急に居なくなったの…。」消え入りそうな声で私の心を震わせた。




なんて言おうか、と視線をさ迷わせる。だけど、浮かんできた理由は一言では説明できないものばかり。




「それは後で説明します…。なので一旦、皆さんに挨拶しにいってもいいですか?」