赤い狼 伍




ななななな、なんてこったい。我らの棗さんが、《SINE》のお父さんである棗パパがご乱心になっている途中に変な物体Hがこのお部屋にドーンッ!って扉を壊さんとばかりに勢いをつけて現れたぞ、さて、どうする稚春、どうするんだ!!!



「ふ、不審者め!成敗してくれるわ!!!」




物体Hをこの手で倒すために武器となるものをあたふたと探す。

と、




「あれ、今日は早いね。お帰り。」


「………ち、はる?」





落ち着きのある声と同時に、懐かしい声が私の脳内に響いた。



無意識に声の主に顔を向ける。


するとやはり、居た。《SINE》の中で一番髪色も目の色も大人しいのに、いつもどこか輝きのある甘え上手で子犬みたいな、連が。



「…………。」


「…………。」



お互いに目を合わせたまま停止する。





……そんな、待って。まだ早い。



「稚春?」



棗にも会っていい時期じゃなかったのに、連にも会ってしまうなんて。



「稚春、だ。」



まだ心の準備ができてない。



「会いたかった…っ。」






皆に会えるような状態じゃない。私の計画じゃまだまだ先だった。



お願い。まだ終わってないの。





「………稚春、泣いてんの?」





私の、私のこの、複雑で汚い感情の整理が、まだ。