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「やぁ…、おはよう。」
うっすらと目を開ける。
その瞬間に降りかかってきた声に、あぁ、私は寝ていたのか。とボーとする思考の中で理解した。
「………稚春、聞こえてる?」
しばらく俯いて掛け布団を眺めていると、先程と同じ懐かしい声が横からかかる。
「わぁ…、なつ、めだ。」
「何その途切れ途切れ。」
「ただ今驚き中。」
クスクス、目を丸くしている私の言葉を聞いて静かに笑う棗は私があの日、逃げ出してから会ってない間も変わらず、だったらしい。
目を細めて笑う棗が懐かしい。
「………本物?」
「…………、夢かもね。」
「…………棗さん、そんな冗談面白くない。」
「笑えよ。」
なんとまぁ、棗は会ってない間、乱暴な口調が癖付いてしまったらしい。誰だ、棗の教育を怠った奴は。いや、そもそも棗の教育をできる人があの溜まり場には居なかった。しまった、これは私のミスだ。
「な、ななな棗!しっかり!お母さんだよ!あんたのこと教育するお母さんだよ!私の胸に飛び込んでおいで!!!」
「あ、お母さん。会いたかった。」
「いでででででっ!なんちゅー力で私の体を引っ張るのさ!」
「わーい、お母さん、子供に対するお母さんの愛は無限大だから何をしても怒らないねー。」
「え、ちょ、待て。何、この私の前髪を掴んでる手。え、なになに!ちょ!なにギュッと掴んでんの!!何キレイに微笑んでんの!!!」
「お母さんお母さんー。」
「ぎゃああぁあああぁあ!!!ゴメンて!私が悪かった!お母さんじゃなくて稚春ちゃんだよー!ねぇ、気付いてっ!」
「あはははー。」
「無表情!怖い!!」
オーマイガー、紳士な棗はしばらく見ない間に消え果てたらしい。素晴らしくサディストだ。あぁ恐ろしい。お前なんてそこのソファーで、わぁい、トランポリンだー!わぁいわぁいっ!って遊んでそのまま飛びすぎてその大きい身長で《SINE》の2階の部屋の天井壊してしまえ。それで隼人に怒られて、しごかれてしまえ。

