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「お気に召されましたか?」
ふわり、香るキンモクセイの匂い。
秋を思い出させる匂いを放つ"それ"にそっと触れて
「はい、すごく気に入りましたっ。」
後ろに立っている女の人を目の前にある鏡越しに見れば、「それは良かったです。」と嬉しそうな声を返された。
全体的に緩くカールのかかった髪。
ピンクがかったブラウンの髪の毛は光に当たると薄いピンクへと色付く。
ここに来る前の私の黒く長い髪の毛とはまた違う、パーマがかかり少し短くなったピンクブラウンの髪の毛が私を飾っていた。
――――二時間前。
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「じゃあまずは髪の毛をイメチェンさせちゃいましょっ。」
「は?」
ウインクしながら人差し指を私に向ける真理子ちゃん。
それに素早く反応すれば「やだ、怖ーい。」真理子ちゃんは乙女な声を出して私の肩を思い切り叩く。
私を叩く必要は果たしてあったのか。
そんなどうでもいいことを考えようとしていた私の耳にまた先程の言葉を真理子ちゃんがねじ込むように言う。
「そうと決まれば早く行くわよー!髪の毛をイメチェンさせちゃいましょっ!!」
「………。」
だから何でそういうことになるんだ。
眉間に皺を寄せて真理子ちゃんを見る。
だけど真理子ちゃんは本気らしい。現に一向に立とうとしない私の体を白く細い腕から、どーやったらそんな力が出るんだというような力で私を立たせた。
素直にビックリだ。
さすがは《藤山》の組長の奥さんだと言わざるをえない。
それが誉め言葉となるかどうかは微妙だけど。

