颯さんが全く悪びれた気がしないのは私の気のせいだろうか。
いいや、これは気のせいではないはず。
「…まぁ、でも、承諾してくださったのには感謝します。」
「おう。じゃあ真理子に稚春の部屋用意させる。」
「ありがとうございます。」
畳に手の先を添えて頭を下げる。
すると、颯さんは目を細めて小さく笑った。
「つーかよ、稚春が困って頼ってきたのがこれが初めてなんだから断るわけねぇだろうが。」
「………。」
「俺は嬉しかったぞ。」
「………。」
「なんならもっと頼ってくれていいんだぞ?」
「………。」
「稚春ー?」
ダーリンが私の顔を覗きこんでくる。
ちらり。
覗き込んできたダーリンへと視線を移すとダーリンがニヤリと。笑った。
「稚春ー、お前泣いてんのか?可愛いやつだな。よし。こっちに来い。」
何がよし、なんだ。ダーリンがあんまり優しいこと言うから泣いちゃったじゃないか。どうしてくれるんだ。ってか、だいたい真理子ちゃんはこんなダーリンのどこが好きなんだろう。
真理子ちゃんってもしかして趣味悪いとか…?
二人に対して凄い失礼なことを頭に浮かべながらダーリンを見る。ダーリンはまだニヤニヤとしながら私を見ていた。
まぁでも、安心した。
「ダーリン。」
「なんだー?」
「フルーツタルトのこと、私まだ許してないからね。」
「………。」
「………。」
「ケ、ケーキ屋に行ってくる。」
「行ってらっしゃい。」
まだまだ大変なことはありそうだけど、ひとまずは。

