「…なんで分かったんですか。」
「顔に出てた。」
当然だというようにダーリンが私に言う。
それを聞いて、ダーリンには一生敵わないなと思った。
「颯さん。」
私の声が颯さんに届く。
颯さんと呼んでしまうのは、私が大事な話をするときの癖だ。
かこん。
鹿威しが鳴る。
それと同時に颯さんの視線が私の目へと移った。
「無理なら断っていただいてもかまいません。…しばらくの間、私をここに置いてください。お願いします。」
がばり。頭を低く下げる。
お願いします、とまた付け加えて。
「………。」
「………。」
「………。」
沈黙が流れる。
やっぱりダメ、なのだろうか。
でも、どうしてもここで引き下がるわけにはいかないのだ。どうにかしてでも許可を貰わないと。
きゅ。
下唇を噛み締める。
「無理を言っているのは分かっています。だけどっ、どうしてもここに置いてくれないと困るんですっ。颯さん、お願いしま「いいよ。」」
「やっぱり駄目ですよね。分かってました。でも、どうしても……ん?」
下げていた頭を勢いよく上げる。
ななな、なんだって!?
「颯さん今なんて言いましたっ!?」
「ん?だから、いいって言ってんじゃねぇか。」
「本当にっ!?」
「本当だって言ってんじゃねぇか。俺が嘘ついたことあるか?」
「あるっ!私がとっておいたフルーツタルト食べたの俺じゃないって言ったのに犯人颯さんだったじゃんっ!!」
「そのせつは悪かった。でもフルーツタルトが食べてくれって煩かったんだ。」
「その言い訳何回も聞いた。」
「悪かったって。でも今回は本当だ。」

