アリスは急にそれを手放すと、身振り手振りで焦りを抑えながら言い訳を紡ぐ。
「そそそそういえばっ、昨日ジンくんたちがお菓子置いてってくれたんだよね、なっちゃんたち食べる?」
お菓子で子どもが釣れるのはせいぜい4歳までと彼女は知らない。
それに気付かないで放置されたままの膝上の裁縫道具が、布の中の物がなんだかを物語っている。
ナツキは裁縫箱と一緒に転がっている、茶色くて丸い、赤い花の刺繍が施された塊を見て確信した。
ブランケットの耳に違いなかった。
ナツキはアリスが抱えているものに飛びつくと、古したガウンをひったくった。
「ああっ」
ひらりと舞うガウンの中から、左耳と右足の取れたブランケットが出てきた。
「やっぱり………」
「な、なっちゃん…」
アリスはもう観念したらしく、申し訳なさそうな顔をしてナツキの肩に手をやった。
ナツキは、それを涙ながらに振り払う。
「アリス姉のばかっ、ばかばかばかばかっ!!」
「ご、ごめんね、でも…」
「俺のブランケットをばらして、どうせアル兄に上着でも縫おうとしてたんだろっ、そうなんだろっ、『ぼんてんて着ると暖かいんだぜー』ってひー兄言ってたぞ!!」
「へ?」
「ナツキ…それをいうなら半纏(はんてん)だよ」
着物の中に綿を入れた、あれである。


