別に悪い奴らじゃ、ないんだが。
それだからこそ、結構対処に困るのだ。
「おーい、修さーん」
名前を呼ばれてそちらを見ると、隣一軒はさんだご近所さんの女の子がこちらに向かってぶんぶんと手をふっているのが見える。
「はやくー!」
「今いくよー」
懇願と牽制の意をこめてもう一度山の方を見、彼女たちが待つ方へ歩き出した。
言い訳をするわけではないけれど、そのとき僕は街灯に背をむけて、さらにいうならば残念ながら後ろに目がついていない。
だから僕は、気づかなかった。
街灯からひょっこり顔を出してこちらを見つめる女の子がいたことに。
彼女のさげるカンテラが、ざわざわとゆれていたことに。
「どうしよーかなー」
言葉のわりにはさして困っていない様子、むしろ愉しそうに少女は言った。
遠くに見えるのはこれからお菓子をねだりに行く一行。
それにまざれなかったことがちょっぴり残念で、でもそれ以上の「オモチャ」を見つけた喜びのほうが、今は勝る。
ツクリモノであるはずの、彼女についている尻尾がご機嫌にゆれている。
それを見ていたのは、一羽の烏と迫りくる夜の影だけ。


