「…………まいったなぁ」
僕はもう一度溜息をついて、今度はあきらめて茜色もだんだんひいてきた空を仰いだ。
本当なら今日は、このお菓子をねだって練り歩く集団を見送ってからひとりで「見回り」をするつもりだった。
今日のような日は、そいつらがでやすい。
大晦日、正月にならんで(大晦日と正月は一緒か?)でやすい日だ。
昔から行われていて、伝統がある。
夜に行われる。
なにより、人間が「彼ら」の恰好をするものなんだ。
「ニンゲン」と混ざって遊ぶには、恰好の行事だ。
「…………いや」
人間「で」といったほうがいいのかも知れないな。
街頭によって作られた、色濃い影をにらみつける。
するとそこから「何か」が走り抜けて、山道へと帰っていった。
僕はふう、と息をつくと、蠢くもののいなくなった影をちらりと横目で見た。


