四方を山に囲まれている、所詮盆地という地形。
それがこの村の特徴であり、逆にそれしかない。
いってしまえば、何処にでもあるようなただの田舎だ。
イベント事には村全体で盛大に祝うことも特徴のうちに入るのかもしれないが。
そんな村だから、当たり前にこのハロウィンという行事も必然的に強制参加だった。
「…………もうそんな年じゃないんだけどなぁ」
僕はなっがいマントをつまんでため息をつき、ぼそっと呟いた。
ここには1ヶ月と少し前に越してきたばかりで、愉快な…………愉快すぎる人たちから逃げ切れなかったのだ。
僕の今の恰好は、まさに全身真っ黒。
さらにその上には、誰のものなのか――もしくは、誰が作ったのか――わからない、なぜか大きさがぴったりの長い黒いマント。
襟が立つようになっていて、ご丁寧に内側は深い赤の二重の仕立てになっている。
ぐるっとまわりを見回すと、お化けの恰好――いや、仮装をした子供とか、レースがゴージャスなドレスをきてティアラもつけている子とか、なぜか全身ピンクの魔女までいる。
別にお遊戯会をするとか、そういうんじゃなくて、ただ単純に今日がハロウィンだ、ということだ。