10月31日。
日が沈んで星が瞬き始めた頃、山小屋。
「ねぇねぇ、ノーラのおばあちゃーん
まだー?」
「まだだよ
もうちょっとまってなさい」
グツグツと煮えたぎる大釜をかき混ぜながら、老婆はそこにトカゲの尻尾を入れた。
立派な鉤鼻と、縮れた長い髪。
その眼光は鋭く、それが柔らかになる瞬間はめったにない。
いかにも魔女と呼ぶにふさわしい風貌。
だって彼女は実際に、本物の魔女なのだから。
「ほれ、これでいいだろう?」
そういってノーラが手渡したのは、濃い橙に妖しく光るカンテラ。
「うん、ありがとう!」
ノーラのまわりを退屈そうに回っていた年端のいかない少女は、華のさくような笑顔でそれをうけとった。
そしてくるりと一周まわり、よし、と何か確認するようなそぶりをみせて、満足そうにうなずいた。
そのままはねるように扉へ駆け出す。
「いってきまーす!」
「おそくなるんじゃないよー」
パタン
扉がしまると、その部屋は暗闇につつまれ、何も見えなくなった。