(ど、どうしよう)

 慌ててタオルを被ったけれど、もはや気休めにすらならない。

 鞄を傘に、手を庇(ひさし)にして端から端まで道路をうかがう。

 雨で視界が煙る中、いくら目を凝らしてもバスが来る気配はない。
 
 駅前ロータリーやデパート前の大きな停留所ではなく、
 昔ながらの道で道路幅も大した広さはないのに、屋根つきのベンチなんて探さなくてもわかる。

 近くにお店はあるけれど、それは停留所とは対岸になるところにあって、
 勢いよく雨どいから流れ落ちる雨水が滝のように飛沫(しぶき)をまいて、歩行者の妨(さまた)げになっている。

 大雨警報のニュース中に映される歩行者というのは、得てして魂が抜けたような顔をしている、と柊は思っている。

 実際、いまの柊自身もまた、
 あらゆる光を呑み込んで、町を廃墟のようなモノトーンの色彩に変え、
 ただうるさいだけであらゆる音を蹂躙(じゅうりん)するこの容赦ない雨に、心が折れそうだった。

 刹那、強いフラッシュが視界の端に飛び込んだ。

 目をすがめる。

 ―――トラックだ。

 しかも、長距離輸送用の巨大トラック……。

 近づくにつれて増す、音と揺れ。
 もはや地鳴りだ。

 自然、柊の顔が引きに引きつっていく。

 
 どうしよう……!