(……ほんと、何やってんのわたし)

 貼り付いた白々しい笑顔もいいかげん見苦しいんじゃないかと、背後のガラス戸に映る自分が目に入るたび思う。

 容赦のない寒さと、乾き切った心が、使い終わったカイロのように表情を凍らせて、
 心ない営業スマイルがすっかり板に付いてしまっている。

 嘘くさすぎて、自分に嫌気が差す勢いだ。

 けれど、通りを行く人たちはそんな柊を一瞥(いちべつ)するか―――……
 それならまだいい方だが、完全にスルーして、見せつけるようにいちゃいちゃと、
 どちらかの家か、あるいは二人の愛の巣か、今日ぐらいは不健全とは言えまい、ちょっとリッチなラブホテルに向かっていくのだろうカップルも大勢いる。

 女子だけでまとまって賑やかに(一部は何かを吹っ切ったようにことさらやかましく)歩いていくのはカラオケか、レストランか。

 男子の集団は……こんな日、ちょっと痛い感じがして見ていられない。
 変に弾けていればなおさらだ。

 そして、そういうやつらは決まって柊をじろじろ見ていくからなおのこと痛ましい気分になった。

 おまえら、いっしょにイイコトしてくれる女の子がとうとう見つけられなかったんだね……。

 自分に重ねて、切なさが胸を衝き上げる。

 できるだけ響くよう声を張って、柊は何度となく繰り返した科白をいまふたたび、
 今回はとりわけ明るく、募る寂しさを持ち寄って温め合う子羊のような彼らに向かって投げかけた。


「クリスマスにケーキ、いかがですかー?」


 男の子たちは一様に不意を突かれたような顔になった。

 戸惑うように互いの顔を見合わせて、またぞろ柊を盗み見る。

 きょとんと柊が小首を傾げると、彼らはまるでコントでもしているように息ぴったりに硬直して、次の瞬間、逃げるように行ってしまった。

 人混みに紛れてあっという間に見えなくなった背中を思う。